だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
私がわかるのは、結局この程度のことしかなかった。
あとわかるのは、湊がお休みの時間のほとんどを私のために遣ってくれるということ。
そして、それは私にとって一番嬉しいことだということだ。
ホットパンツにキャミソールを合わせて、フード付きの灰色のパーカーを羽織る。
まだ伸び続ける身長のおかげで、ホットパンツからはすらりと長い脚が伸びていた。
部屋の壁に制服をかける。
まだ真新しいこの制服を脱ぐときに、私はどんな風になっているのだろう。
静かに窓に当たる雨の音を聴きながら、湊が待っているリビングへと向かった。
リビングに戻ると、湊はキッチンに立っていた。
カウンターキッチン越しに目が合うと、にっこり笑う。
こぽこぽと音を立てて、ふんわりといい香りが漂う。
私がとても好きな匂い。
ぱたぱたとスリッパの音を立てて、テレビの横にあるスピーカーセットの電源を入れる。
流れる音楽は、静かなバラードばかりを集めた、私と湊のお気に入りのMDだ。
テレビをつけるのがあまり好きではない私達は、いつも静かな音楽の中にいるのが好きだった。
邦楽、洋楽、クラシック。
湊が選ぶ音楽はどれも優しい音楽で、私の心を穏やかにさせた。
食器棚を開ける音がしたので、そっとキッチンへ向かう。
カチャカチャと食器を探している湊の背中を、そっと見つめた。
線の細い背中。
それなのにしっかりとした骨格がわかるのは、やっぱり男の人だからだろうな、とぼんやり考えていた。