だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「湊も、不安になったりすることがあるの?」
湊は目を見開いて私の顔を見つめた。
そして目を細めてゆっくりと微笑む。
肩に乗った私の頭に、自分の頭を重ねるようにして。
「もちろん。大切だから、どうしていいかわからないことは沢山あるよ。時雨の顔を見ればわかることは多いけど、それが本当にそうなのか、わからないからね」
掠れた声がする。
「大切だから確かめたい。でも大切すぎて、確かめられない」
大切だから、確かめたい。
大切すぎて、確かめられない。
私と湊はやっぱりどこか似ているのかもしれない。
臆病だけれど傲慢。
好きだから、知りたい。
だけど、我が儘を言って困らせたいわけじゃない。
いくつもの矛盾を抱えている。
私は感情がすぐに表に出てしまうけれど、それでも不安になると湊は言った。
その一言が、私と同じ気持ちなのだと教えてくれた。
どちらからともなく、私達はキスをした。
おでこに。
瞼に。
頬に。
鼻に。
お互いに言葉を発する代わりに、キスをした。
優しく触れる、柔らかい感触。
時折、熱っぽく唇をついばまれるたびに、びくんと身体が反応してしまう。
深く繋がるような湊のキスを、必死に唇で受け止める度。
背中と頭の後ろにある湊の手に力が入る。
胸を締め付ける。
体温がほんのり上がる。
力強い腕の感覚。
どれひとつ逃さず、身体に染み込ませたかった。