だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
まどろむ意識の中で、何度もそれに応えていた。
二人でいられる時間が、限られていることを。
二人とも知っていたから。
湊に抱き締められたまま、そっと壁に掛けられた時計を見た。
時計の針は五時半をさしていた。
湊から離れるのが嫌で、ぐっと湊の顔を見つめる。
「少しだけでいいの。・・・膝、貸して」
きょとんとした顔をして、湊は私を見ていた。
そして私から少し離れて、ソファーの端に座り直した。
「いくらでもどうぞ」
「ありがとう。嬉しい」
「喜んでくれるなら、時雨専用枕になろうかな」
「膝じゃないのも、嬉しいけどね」
「そうか。難しいな、時雨は」
ぽんと太ももを叩いて、にこにこと笑っている。
その笑顔に嬉しくなって、そっと湊の膝に頭を預けた。
優しく頭を撫でられる。
その部分が、ほんのりと温かくなるようだった。
オフホワイトの革でできたソファーは、ひんやりとしていた。
何も言わず目を閉じて、少しだけで眠ろうと思った。
六時になったら、きっと湊が起こしてくれる。
そしたら、冷めた紅茶を二人で飲んで夜ご飯準備をしよう。
四人分の食事の準備を。