だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「お前、そんなに頑張るな。まず服装と化粧を直してから本部に行くこと。それから舞台袖で、しっかりとステージを見て来い。現場を見学するのも仕事のうちだ」
そう言って、私のおでこにバチッとデコピンをする。
意外と力をこめて。
「いったぁ・・・。何するんですか!結構本気でやりましたよね、今!」
「そんなに強くした覚えはないけどな」
「だったらもっと手加減してくださいよ!アザになったらどうするんですかっ!?」
「化粧で隠せ」
「そういうことを言ってるんじゃないんですっ!曲がりなりにも女なんですけどねっ!」
「だから手加減しただろ」
「どこがだっ!!!」
思ったよりもいい音を響かせたデコピン。
そのせいで、会社にいる時のような大きな声で抗議をしてしまった。
チーフリーダーが、ブッと吹き出して笑っていた。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
「ハハッ!山本さん、それくらいの感じの方がいいですよ。すごくお堅いのかと思ってたんですが、いいキャラしてますね」
クスクス笑いながらそう言ってくれたチーフリーダーに、照れ笑いをしながら、なんだか部屋の中の空気が変わったのを感じた。
ドアを開けて出て行こうとしていた二人のスタッフさんにまで、笑われてしまった。