だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版





「ほら、これ」


「わ、ありがと。じゃあ、冷蔵庫借りて冷たい物だけ入れさせてもらおうか」




森川が後ろから差し出したのは、ブラックペッパー入りのベビーチーズだ。

缶チューハイを買う時にいつも買うこのチーズは、私と森川のお気に入りだ。


もともとは私が大好きだったのを、森川に食べさせたら見事にハマッたのだ。



キッチンを見ると、櫻井さんが立っていた。

それを避けるのもどうかと思ったので、袋を持ってキッチンに向かう。

各々が飲みたいものをリビングのテーブルに置いて、袋を持ち上げる。


キッチンにいた櫻井さんの顔は、もうさっきまでの顔ではなかった。



部下に見せる『櫻井圭都』の顔。




「冷蔵庫、お借りします」




返事を待たずに冷蔵庫を開けて、中身を移していく。

相変わらず何も入っていない冷蔵庫に『ちゃんと料理したほうがいいですよ』とか、『寂しい中身ですね』とか。

いつも通りの小言を言いながら。



二人でわいわい言いながら、冷蔵庫に全部入れきる。

お弁当やカップラーメンは流し台に置きっぱなしにしておこう、と思った。



カウンターキッチン越しに、森川達がお菓子を開けているのが見える。

全部開けても食べきれないのは目に見えていたけれど、そんなのお構いなしに封を開けていく。


そんな様子を見て、やっぱり笑いが込み上げる。

あの三人はまるで兄弟みたいだな、と思う。




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