だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
松山と篠木は楽しそうに笑って、沢山のことを語り合っていた。
仕事のことだけじゃなくて、プライベートなことも。
この二人は、昔から知り合いだったかのように仲が良く、ウマも合うようだ。
カノジョもちの松山と、独り身の篠木。
見た目でいえば逆っぽいのに、恋愛のアドバイスをされているのは篠木の方だった。
不思議な気持ちになりながら、二人を見つめる。
横では、森川と櫻井さんが仕事のことや尾上部長のことを語り合い、会社では見せない森川の顔を櫻井さんは嬉しそうに眺めていた。
私は時折みんなの話に口出しをしたり、頷いたりしながらも、かなりのペースでお酒を呑んでいた。
右側の耳から手を離すことが出来ないまま、顔が赤くなるのを感じた。
けれど、それも全部お酒のせいにしたかった。
森川と櫻井さんの方をなかなか見れない私を不思議に思ったのか、ふとした時に森川が私の名前を呼ぶ。
その声は、心配と不安とそれ以外の何かがごちゃ混ぜになったような声で。
いつもの森川らしくない響きにとても驚いた。
それでも、ぎこちなくならないように気をつけながら、私はいつも通りを装って森川に応えていた。
敏感に感じる森川は、私がいつもと違うことくらいお見通しなのだろうけれど。
その場で聞いてくるほど、無粋な人ではないことを知っていた。