だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
何かトラブルでもあったかな、と思いながら電話に出る。
確か森川も今日は休みのはずだけれど、真面目な森川は一人で会社に出ているのかも、と想像していた。
「もしもし」
『もしもし。何かしてたか?』
「ううん。今洗濯物を干してたくらい。何かあった?トラブル?」
『いや、仕事で連絡したんじゃない。ちょっと付き合って欲しいところがあって』
仕事以外での森川の連絡は珍しかった。
もちろん、普通にご飯に言ったり飲みに行ったりすることはあるけれど、休日の呼び出しは久しぶりだ。
というのも、ここ最近は私は何かにつけて友達と遊びに行く約束をしていた。
口実があることで、早々に会社を抜け出すことが出来たから。
あまりあからさまに断ると、どんどん訝しがっていくに違いない。
森川は、人の気持ちや人間関係にとても敏感だから。
言葉を切ったきり何も言ってこない森川を、とても森川らしい、と想った。
さっきの言葉だけで、イエスかノーが返ってくることを知っているのだ。
まぁ、その返事を返すのは私なんだけど。
「いいよ。今日は特別用事もないし。で、どこへ?」
そう問いかけると、少し間があった。
そんなに言いづらいところへ行きたいのかな、と思ったので、無理に突っ込まず待ってみることにした。
すると小さな声で意外な言葉が返ってきた。