だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
観賞...カンショウ
待ち合わせは、JR駅の改札付近だった。
大きなデパートと若者向けのショッピングモールがある場所のほうが、より色んなものを見られると思ったからだ。
待ち合わせの五分前に着くように向かったが、すでに森川はそこにいた。
大きな身長が、待ち合わせの目印にもってこいだ。
どこにいても見つけやすい森川。
会社とは違うカジュアルな服は、森川を少しだけ若くさせる。
長めのアシンメトリーな白いTシャツに黒の柔らかそうなベスト。
少しダメージのきいたジーンズをきちんと履いている。
ヒップバッグをして、じっと一点を見つめている。
その先にあったのは、垂れ幕になっている広告。
大きな白い布にほんの少しのコピー。
けれどそれが鮮明で、目を惹いて離さない。
本当に真面目だな、と思いながら森川に声を掛ける。
「お待たせ」
こちらを振り向いておう、と応える。
すっと下から上まで視線をずらして笑う。
「いいな、私服」
「そう?ありがとう」
さりげなく褒めてくれた森川。
そういうことが出来るのは、営業として成長した印のような気もする。
森川はあまり否定的なことを言わないので、何を着て来てもこう言ってくれるだろうな、と思ったりするけれど。