だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
ぴったりとした緑がかった青のチューブトップ。
白の編み風ボレロ。
ロールアップデニムに黒のミュール。
気合よりは楽さを選んだこのスタイルも、森川にとっては「いいな」の対象なのだ。
実はそこまで服に興味がないのかな、と思うけれど、森川はきちんと自分に似合うものをセレクトしている。
とりあえずデパートの化粧品売り場に向かって足を進める。
森川はドアを開けてくれたり、私が歩きにくくないように、と人ごみを避けてくれたりした。
さりげないその仕草に、やっぱりいいヤツだな、と感心してしまう。
化粧品売り場に近づくと森川は足を止めた。
まずは遠くから見る、そして近づいて詳細を確認する。
真面目な顔はすでに仕事モードになっていて、うちの部署は『仕事バカ』が集まるんだなと実感した。
隣に並んでいるのもちょっと怪しい気がしたので、一人でぷらぷらと歩いてみることにした。
夏色の煌めく化粧品売り場。
青、緑などの色が多く、パールの効いた商品も沢山並べられていた。
こういうところで化粧品を買わない私は、見たこともないような物をくるくると見て回った。
「よろしければ、試してみませんか?」
色々なメーカーで声を掛けられるけれど、こういう場所に慣れていなくて断ってばかりだった。
一番驚いたのは男の美容部員さんがいることで、さすがにイケメン揃いだった。
うちの営業達がここで立っていても、別に違和感がないかもしれないと思うと、不思議な感じはするけれど。