誠の華
第一章 出逢い

1

「暑い……な」



ミーンミーンと蝉が鳴く暑い季節。
雲一つない青い空。
ジリジリと地上を燃やすように太陽が
輝いている。


回りが木に囲まれた森の中、
人工的に作られた道を歩く青年、新撰組監察方
山崎丞は任務帰りのようだ。


「ちっ……」


普段、感情を表さない山崎だが、どうやら
この暑さのせいで珍しく眉間に皺を寄せていた。


「…………クゥン……」

どこからか聞こえてきた鳴き声に辺りを
見渡すが見つからない。
空耳にだろうか、と諦めようとした時

「……クゥン…………」



今度はハッキリと聞こえた。
弱っているのか小さい鳴き声だ。
普段なら構わないのだが…

「…………」



何故か今日は気になる。
仕方ない、と言った風に溜め息を漏らし
声が聞こえてきた林の方へと足を進めた。

林の中のおかげか幾分か涼しい。
神経を集中させ、気配を探る。
音をたてないように慎重に足を進めると
少し離れた一回り大きい木の根本に白い獣が
伏せていた。



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