Bussiness Trip
「ふっ」
網棚から荷物を下ろした戸上が突然笑うので、雪乃が怪訝な顔をする。
「雪乃、髪の毛、すごいことになってる」
そう言って、戸上が髪に手を伸ばすから、雪乃が思わず体を引きそうになる。
「じっとして」
戸上は、雪乃の腕をつかんで引きとめると、手早く手櫛で乱れた髪を直した。
案の定、通路を挟んだ隣のサラリーマンが、意味深な視線を送ってくる。
『絶対に誤解された』
そんなことをいちいち気にしてしまう雪乃に対して、戸上はうなずきながら、満足そうに微笑んだ。