Bussiness Trip

「ほんとに、飲めないんです」

必死で訴えるが、聞いてもらえない。
母の飲めない体質を受け継いで、生小でももてあますほどである。

「まあ、そう言わず」

郷野はさっさとカクテルを注文してしまった。

雪乃はさっきから郷野のつけている香水に頭がクラクラしそうだった。
これは残り香どころではない、立派な公害である。
ワックスでばっちり固めて、櫛のあとが見えるような頭髪、靴はピカピカに磨きあげられ、派手なネクタイに一分の隙もない出で立ち。
きっと、ハンサムの部類に入るのだろうが、ペラペラと軽口で人のペースを全く無視して自分のことばかりしゃべる、雪乃が最も苦手とするタイプだった。

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