Bussiness Trip

「え、大丈夫?」

雪乃が机を回って、俺の顔をのぞきこむ。

「いいよ、頭のせても」

頭をふわりと持ち上げられて、膝に載せられた時、心臓がびくりとはねた。
雪乃が俺の頭を優しくなでている。

「久しぶりだな、頭なでられたの」

雪乃の顔を見上げて言った。


「嘘ばっかり。遊び人の戸上さんが、何言ってるんですか?」

そう言って、おてふきを額にのせられて、ますますのぼせそうになった。

「俺、人に言われるほど、遊んでないぞ」


雪乃がふふと笑って言った。

「知ってた? 今回の出張、みんなに心配されてたの?」

「何を?」

「私が戸上に、何かされるんじゃないかって」

「ばかやろう」

「社内では手が早い男で有名なんですよ、戸上さんは」

「ばかいえ。俺はなあ」


突然、唇に人さし指を置かれて、その柔らかい感触に俺は飛び上がりそうになった。

「はいはい、酔っ払いは静かにしましょうね」

『こいつ、ほんとに警戒心なさすぎだろ』
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