Bussiness Trip

しばらくして、冷たいおしぼりがやってきて、額や頬をぬぐわれるのが気持ちよくてうっとりと眼を閉じた。

「お水、飲む?」

雪乃はどこまでも優しい。

「ああ」

体を起こすと、雪乃が器用に背中を支えてくれ、口に当たる冷たいコップが心地いい。


「昨日も思ったけどさ、おまえって、けっこう胸あるよな」

言った途端、雪乃が背中に添えていた手をパッと離した。

「な、何、言ってんの、変態!」

雪乃が俺の体を押しやる。


「うわ、やめろ、水こぼれるだろ」

その瞬間、グラスに残っていた半分くらいの水が俺のシャツにこぼれた。

「ご、ごめん。大丈夫?」

「大丈夫じゃない。びしょぬれだ」

「どうしよ、ちょっと待って、タオル出すから」

自分の旅行鞄から出してきたタオルで俺の体を拭き始める雪乃。


「もういい」

「え?」

「だから、もういい。後は自分でやる」

あちこち無造作に触られるのにたまらなくなって、その手を払うと、雪乃が傷ついた顔をした。


「ごめ……ん……ね……」

つぶやくと、そのままパタパタと部屋を出ていってしまった。

「おい、待てって。くそ、何やってんだ」
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