花結び
七緒の前に膝を付いた彼は手が汚れるのも気にもせず血を拭った。


生きている、と改めて感じ視線を下げた。


そんな七緒の様子を黙って見ていた彼は訊ねる。

「……キミ。名前は?」

「七緒、結城七緒」


周りの様子は時代劇のセットの中に入り込んだかのようで。

どこか自分の存在が“異質”だと感じさせる。

「吉田、稔麿。
あれが高杉晋作」


吉田が指を指した先には、口笛を吹く高杉の姿がある。


「七緒、キミは……何者?」


眉を寄せて怪訝そうに吉田が訊ねるのも当然。


「キミ……突然現れた」


『お願いしますね……』


亡き師の穏やかな声と、共に。

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