砂漠の夜の幻想奇談

「ふわぁ…」

少し眠くなってきたのか、サフィーアが小さくあくびをした。

「お休みになられても構いませんよ?」

「ん…大丈夫よ」

と言いつつも、姫の声に覇気はない。

不定期に落ちてくる彼女の瞼が「眠い」と語っている。

腕の中のサフィーアを見て、カシェルダは苦笑した。

「全く…姫、我慢なさらずに――」


その時だった。


突然、ラクダの足がもつれた。


「きゃ!?」

「なっ!?」


異常事態にカシェルダが慌てる。

「どうしたんだ!?」

歩みが止まってしまったラクダ。

その場で足踏みをしている。

訝しんで前方を見てみると、ラクダの足元にピンと張られたロープが仕掛けられていることに気づいた。

「これは…罠?まさかっ」


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