砂漠の夜の幻想奇談
カシェルダはラクダから飛び降りた。
腕を掴まれているサフィーアを視界で確認しながら、襲い来る敵を短剣で威嚇し切り付ける。
「おい、てめぇら。後は任すぜ。俺はちょいとひとっ走りして、この女を売っ払ってくらぁ」
突如聞こえた会話に、カシェルダはハッとなりサフィーアを見た。
「いやぁ!カシェルダ!カシェルダ!」
別のラクダに無理矢理乗せられる大切な姫君。
(姫っ!!)
「貴様!!彼女を放っ――」
カシェルダの言葉は不自然に途切れた。
「へへ、やったぜ」
カシェルダの背後には、こん棒を握った男。
護衛官の額から血が流れた。
「カシェルダぁあ!!」
「ひっ…め…」
カシェルダはガクリと地に膝をつけると、砂の上に倒れ込んだ。
目の前の信じられない光景に、サフィーアの意識は真っ暗になった。