砂漠の夜の幻想奇談
驚いて声も出ない王妃様に女性は言った。
「我の力でお前の腹に女児を宿してやろう。その代償として、お前の十二人の息子達をくれるかい?」
この誘惑に王妃様はゴクリと生唾を呑んだ。
これは夢か、現か。
そして、問う。
「貴方様は…神ですか?」
「神とな?我は神にあらず。人は我らを魔神(ジン)と呼ぶ。ああ…お前達の国では悪魔と言った方が理解しやすいか」
「悪、魔…」
悪魔と聞いて声が震えた。
今、自分は悪魔に契約を持ち掛けられていると知り冷や汗が出る。
「そう恐れるな。我は約束は守る。あの見目麗しい十二人の息子達を差し出せば、必ず娘を生ませてやろうぞ」
「かな、らず…?」
理性が叫ぶ。
誘惑に負けるなと。
しかし――。