砂漠の夜の幻想奇談
盗賊の頭と商人が連れ立ってやって来た先は、もちろん“帝王館”だった。
彼らはサフィーアの閉じ込められている部屋の前へ到着した。
「えっと~、カギは…これか」
ガチャガチャと鳴るカギの音。
部屋の中でサフィーアは身をすくませた。
そして数秒後、バンと木の扉が開けられた。
「おい!食っとけって言ったよな!」
開口一番、男はテーブルの上に綺麗に残っているパン菓子を発見して怒鳴った。
床に座り込んでビクリと反応するサフィーア。
お腹は減っているが、姫としてのプライドがどうしてもかぶりつく行為を許さなかった。
「まあまあ、怒鳴ることはないだろう?」
男とは別の柔らかい声に、サフィーアはふと顔を上げた。
(誰かしら?)
盗賊の頭と違って、品の良い微笑に清潔な服装の老人。