砂漠の夜の幻想奇談


 盗賊の頭と商人が連れ立ってやって来た先は、もちろん“帝王館”だった。

彼らはサフィーアの閉じ込められている部屋の前へ到着した。


「えっと~、カギは…これか」


ガチャガチャと鳴るカギの音。

部屋の中でサフィーアは身をすくませた。

そして数秒後、バンと木の扉が開けられた。


「おい!食っとけって言ったよな!」

開口一番、男はテーブルの上に綺麗に残っているパン菓子を発見して怒鳴った。

床に座り込んでビクリと反応するサフィーア。

お腹は減っているが、姫としてのプライドがどうしてもかぶりつく行為を許さなかった。

「まあまあ、怒鳴ることはないだろう?」

男とは別の柔らかい声に、サフィーアはふと顔を上げた。


(誰かしら?)


盗賊の頭と違って、品の良い微笑に清潔な服装の老人。


< 111 / 979 >

この作品をシェア

pagetop