砂漠の夜の幻想奇談
「はぁ…はぁ…」
やっと解放された時、サフィーアは息も絶え絶えな状態だった。
そんな彼女を見て満足げに微笑む王子。
「うん、やはり君だね。なぜ奴隷に成り下がったのかは後で聞き出すとして…」
彼は隣室の方を向いて叫んだ。
「バルマキー!いるか!」
「は、ここに」
音もなくスッと現れた文官の側近。
「財務官に連絡してこの奴隷の支払いをさせておけ」
サフィーアが息を呑み、商人の目が点になった。
バルマキーは静かに一礼する。
「サフィーアは俺が買う」
この宣言に商人は仰天しつつも笑顔で言った。
「これはこれは…貴方様がお気に召されましたか!いや、実はですな。私は貴方様のお父上、オマル王様にと思いこの娘を連れてきた次第でございます」