砂漠の夜の幻想奇談
「父上に?これ以上父上に女は必要ないだろう。俺がもらう。いくらかな?」
「金貨十万ディナールにございます」
買ってくれるのならば王子でも良いと思ったのか、商人はすかさず値段を言った。
「そうか。彼女が身につけている服や宝石ごと買う。もう十万ディナール出そう」
「有り難く存じます」
「それから、これは俺個人の感謝として受け取ってくれ。今後、お前の商品全てに免税権を与える。よいな」
「は、はい!ありがたき幸せにございます!」
彼のおかげでサフィーアと再会できた。
感謝の気持ちを免税権で表す。
「ではバルマキー、後の手続きは任せる」
「御意」
再び一礼すると、バルマキーは商人と共に隣室へ移動した。
「サフィーア、おいで。君もよく知っている俺の寝室で話をしようか」
笑顔のシャールカーンに手招きされて、サフィーアは緊張しつつも彼の背中についていった。