砂漠の夜の幻想奇談
「それからラクダで帰ることになったのだけど、砂漠の途中で盗賊に襲われて…」
「成る程ね。それで売られて売られて、ここに来たと」
隣で勝手に納得しているシャールカーンを無視して、サフィーアはカシェルダのことを考えた。
(そうだ!シャールにカシェルダのこと頼んでみよう!)
彼女は縋るような眼差しでシャールカーンを見上げた。
「シャール!お願いがあるの」
「ん?何かな?」
「カシェルダを探してほしいの。盗賊に襲われた時、はぐれてしまって…」
「何だ?護衛官は君を置いて逃げ出したのかい?」
「違うわ!私を守って傷ついて……死んでしまってるかもしれない…どうしようっ…カシェルダ…」
涙目になるサフィーア。
シャールカーンは微妙な表情をしてから「やれやれ」と頷いた。