砂漠の夜の幻想奇談
長椅子から寝台の上へと彼女を運び、そのままゆっくりと押し倒す。
「君は感じなかった?起きた時、隣に誰もいなくて寂しかったとか…。もしくは、俺を思い出して恋しく思ったり」
彼の寝台に横たわっているせいか、甘い薔薇の香りが広がる。
「別に、そんなこと…。半分、夢かと思っていたし」
しかし、あの日の朝、この薔薇の香りが夢ではないと教えてくれた。
それに…。
(…また会いたいとは、思った…)
だからカシェルダにアラビア語を教えてと言ってみたり。
(会えて、嬉しいとも感じたわ…)
だからといって、この感情は即結婚には繋がらない。
寝台の上でサフィーアは、彼にクルリと背を向けた。
「どうした?」
「……やっぱり、無理です」
「………そうか」