砂漠の夜の幻想奇談
ゆったりとした切ないメロディー。
「愛の、歌?」
サフィーアの目がパチっと開かれた。
「愛というより恋かな。まあ、俺にとっては、母上が歌って下さった子守唄という印象が強いけれど」
「子守唄なの?」
「そうだよ。だからほら、目を閉じて」
髪を梳いていた手で今度は頭を撫でる。
そして彼はもう一度歌った。
甘い声音。
薔薇の香り。
穏やかな日の光。
優しい手の温もり。
それらに包まれて、サフィーアのまぶたが次第に落ちてくる。
昨夜はずっとラクダの上で泣いていたため、睡眠を取った記憶がない。
(頭が…ふわふわする…。気持ちいい…。寝ちゃ、うよ…シャール…)
そして数分後、とうとう彼女は眠りに落ちた。