砂漠の夜の幻想奇談
第六話:寵愛されし女奴隷


 サフィーアがボンヤリと目覚めたのはまだ日のある夕方だった。

「ここは…」

辺りを見回しながら、むくりと寝台から身体を起こす。

隣には誰もいない。

自分一人。

けれど、見知った自分の部屋ではなくて。

「…シャールの部屋、か…」

眠って起きたら自分の部屋だった、なんて奇跡が二度も起こるわけがない。

わかっていても少し期待した己を自嘲しながら、彼女は寝台から降りた。


「どうしよう。どこに行けばいいのかな…?」

何をすればいいのかも、よくわからない。

困り果てて部屋の中央に突っ立っていると、パタパタと響く足音が聞こえてきた。

「誰か来る…?」


そして数秒後、廊下に通じる扉が開かれた。

「あ!お目覚めでした?」


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