砂漠の夜の幻想奇談

入ってきたのは若い女性だった。

綺麗なストレートの黒髪に、カシェルダと同様やや褐色の肌。

見た目からして年齢はサフィーアよりも年上のようだ。

「お腹すいてませんか?広間でお食事にいたします?」

「え?あ、あの…」

突然やって来て、屈託ない笑顔で食事を勧める彼女は何者か。

サフィーアが困惑していると、それに気づいた彼女が慌てて頭を下げた。

「あ!すみません。申し遅れました!私はドニヤと申します。王子からサフィーア様のお世話をするよう命じられました。よろしくお願い申しあげます」

「お世話?」

「はい。サフィーア様の事情は王子から全てうかがっております」


< 144 / 979 >

この作品をシェア

pagetop