砂漠の夜の幻想奇談
「ドニヤ、俺とサフィーアの食事をここに運んでくれ」
「広間へお出でには…?」
「行かない。ここで静かに食べるよ。邪魔されたくないんでね」
「かしこまりました」
ドニヤが退出すると、シャールカーンはサフィーアを長椅子へ導いた。
共に座り、くつろいだ様子の王子をちらりと見てから、サフィーアはおもむろに切り出した。
「あの…私、一日でも早く服作りを始めたいと思っているの。それで…」
「ああ、だろうと思って、羊の手配はしておいたよ。明日にはここに届く手筈だ」
思考を読まれていたことへの驚きが、素直にサフィーアの顔に出た。
しかし、それも一瞬のこと。
すぐに笑みへと変わった。
「ありがとう」
「どう致しまして。毛の刈り方や糸紡ぎの方法などで不明なことがあれば、全てドニヤに聞くといいよ。そのための召使だからね。遠慮なく使ってやってくれ」