砂漠の夜の幻想奇談

「そうだ。自由にしていいとは言ったが、サフィーア。あまりこの屋敷…まあ、できればこの部屋から出ないで欲しい」

「屋敷はわかるけれど…部屋からも?」

「部屋の外にはうるさい輩が大勢いるんだ。君を守りたいんだよ。わかってくれるね?」


真剣な眼差しの王子だったが、サフィーアには意味がサッパリ不明だ。


「よくわからないわ。この部屋は貴方の部屋よね?私がずっといるわけにはいかないと思うのだけど…」

目の前に並べられていく料理を眺めながら首を傾げる。

そんなサフィーアに彼は囁いた。


「だからね、君もこの部屋で一日を過ごすんだよ。俺と共に食事をし、共に歓談し、共に寝るんだ」

「え…?」

聞き間違いかと疑うサフィーアの瞳が、妖艶に微笑む王子を捉えた。


「君に個室は与えない。常に俺の傍にいて」


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