砂漠の夜の幻想奇談
宣言されてから彼女は事の重大さに気がついた。
「しょ、食事はまだしも…寝るのも着替えるのもここで…!?」
「そうだ。まあ、着替えを見られたくないのなら、俺が公務へ行った後に着替えるといい。寝台に関しては問題ないだろう。大きいから」
眩しい程の笑みを向けてくるシャールカーンに、サフィーアは一瞬、気が遠くなった。
これから、この屋敷にいる限り今のような調子で王子に振り回されるのか。
(でも、頼れるのはシャールだけ)
その事実が彼女を従順にさせた。
その日、サフィーアはシャールカーンと同じ寝台で夜を過ごした。
なかなか寝付けなかったが、彼に優しく頭を撫でられるうちに緊張がほぐれ、いつの間にか眠りについたのだった。