砂漠の夜の幻想奇談
堂々と宣言したカシェルダに王子だって黙っちゃいない。
すぐに立ち上がり、同じ目線で言い切った。
「勝ちをくれてやる気はないよ」
「なんとでも」
「決闘の方法は?」
「もちろん剣で。相手を殺したら終了だ」
(殺す!?)
サラッと信じられないことを言ったカシェルダにサフィーアが飛びついた。
「姫?」
(ダメよ!決闘なんて絶対ダメ!!)
決闘をしたらどちらかが死ぬことになるのだ。
シャールカーンが勝ってカシェルダが死ぬのは当然嫌だが、シャールカーンの死を見るのも辛い。
「姫は反対なさりますか?」
(当然よ!)
コクコクと頷くも、聞き入れてはもらえなかった。
妙に熱くなっているシャールカーンに遮られる。
「これは俺と彼の問題だ。君は口出し無用だよ。場所は…中庭にしようか」
「承知した。すまないが剣を一振り貸してくれないか」
「構わないよ。君だけ短剣っていうのはフェアじゃないしね」
こうして、思わぬ事態に唖然となるサフィーアを置いてきぼりに、決闘の準備が始められた。