砂漠の夜の幻想奇談
もどかしくて拳を握った時だった。
「サフィーア様!ここにいらっしゃったのですね!執務室にいないので探しましたよ」
パタパタとドニヤが駆けて来た。
(ドニヤ!もう礼拝が終わったの?気づかないうちに、かなり時間が経ってたのね)
「あら?中庭にいるのは王子?それに…誰かしら?見かけない人ですね」
(そうだ!ドニヤなら止められるかもしれない!)
だが、どうやって伝えよう。
サフィーアが悩んでいると、また人がやって来た。
武官のトルカシュと側近のバルマキーだ。
「サフィーア様~。王子が礼拝に来なかったんですが、居所知ってます?」
トルカシュの質問にサフィーアは中庭を指さした。
「おや、あそこにいらっしゃいますね。三日月刀を持って」
バルマキーの声につられ、皆で一斉に中庭の光景を見つめる。