砂漠の夜の幻想奇談
「太守様が決闘?」
「相手は誰なんだ?王子の剣と互角なんて、かなり腕の立つ奴だぜ」
「太守様カッコイイわね~!普段の微笑みもいいけど、ああいう真剣な表情も素敵っ」
「あら、よく見たら黒髪の方も美人だわ!」
集まってきたギャラリーの声を耳にしながら、サフィーアは手っ取り早い手段を選ぶことにした。
全力で駆け出し、執務室へ戻る。
「あ!サフィーア様!?どちらへ!?」
ドニヤの声が後方から聞こえたが、気にせず廊下を走り執務室の中へ。
そして机に置かれていた筆を取り、紙にサラサラとラテン語を書き始めた。
「サフィーア様!」
ドニヤが追いついた時には、すでに文章は完成。
焦る思いから勢いよくドニヤに紙を見せるも、申し訳なさそうに肩をすくめられた。