砂漠の夜の幻想奇談
「申し訳ございません、サフィーア様。私は文字が読めないのです…」
この国の識字率は非常に低い。
ドニヤが特別なのではなく、一般市民の大半は文字の読み書きができないのが当たり前。
ましてや異国のラテン語を解せよなど論外であった。
「そうだ!バルマキーを呼んできましょう!彼なら書記ですから、きっと読めます!」
ドニヤが紙を持って駆け出そうとした時、ちょうど執務室にバルマキー達が入ってきた。
「王子があんな状態では政務に差し障ります」
「でも聞く耳もってないよな…」
トルカシュと愚痴を言いつつ仕事を再開させようとする。
そこへドニヤとサフィーアが例の紙を突き付けた。
「バルマキー!読んで」
「なんです?ラテン語?もしやサフィーア様がお書きに?」
ドニヤの隣で頷くサフィーア。
バルマキーは「ふむ」と納得すると、紙を受け取り読み上げた。