砂漠の夜の幻想奇談

「えー…二人を止めろ。さもなくば、どちらかが…死ぬ…」


(そう!二人を止めて!でないと死んでしまうわ!!)


深刻な表情のサフィーアにトルカシュが冷や汗をかいた。

「死ぬ!?命賭けた決闘だったのか!?」

驚く彼の肩にポンと手を置くドニヤ。

「ここは武官の出番よね?トルカシュ、あんたが割り込んで止めてきなさい」

「姉ちゃん、俺はまだ死にたくない」

会話の通り、ドニヤとトルカシュは実の姉弟だ。

普段なんだかんだと文句を言いながらも姉に甘いトルカシュはドニヤの使い走りを引き受けているが、今回だけは譲れない。

誰しも自分の命は可愛いものだ。

「トルカシュあんた、それでも武官なの?」

「戦に出るのと決闘に割り込むのとじゃ全然違うんだよ!決闘には矜持とか名誉とか絡んでくるから面倒なんだ!下手したら俺が二人に殺されるっての!」


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