砂漠の夜の幻想奇談
カンマカーン王子。
シャールカーンの異母弟であり、バグダードの王宮で蝶よ花よと育てられた乙女のように純粋な少年。
お転婆が目立つサフィーアよりも、彼の方がお姫様らしいかもしれない。
「あ、ドニヤもいる!それから……君は?」
サフィーアをジッと見つめるカンマカーンにバルマキーが適切な紹介をした。
「サフィーア様です。シャールカーン王子の寵姫でいらっしゃいます」
「兄上の寵姫!?あの兄上に見初められたんですか?」
サフィーアに問うも、頷くだけで口を開こうとしない彼女に「あれ?」と思っていると、またもやバルマキーが横から説明してくれた。
「申し訳ございません、王子。彼女は声が出せないのです」
「あっ…そうだったんですか。すみません、そうとも知らずに…」
礼儀正しく謝る王子に少なからずサフィーアは衝撃を受けた。
誰かさんとは大違いでいい子だ、と心の中で感動する。