砂漠の夜の幻想奇談
「でしょ!?本当ムカつく!この料理だってサフィーア様が食べるのよ!?ラマダーンだからあたし達は食べれないのに…!わざわざ用意する身にもなれっての!」
イライラしつつ、おぼんのような大皿にできたての料理を乗せていた時、ふとナグマは手元にあった酢の容器に気づいた。
「……あ~」
何をひらめいたのか、彼女はその容器を手に取ると、サフィーアに届ける料理の上にビチャビチャとかけ始める。
「あっ!ちょっとナグマ!」
ノズハが注意するも、時すでに遅し。
メインの若鶏、デザートのパイや砂糖菓子にまで酢がたっぷりかかってしまった。
「ふー。スッキリしたわ」
「何がスッキリよ!!バレたらあたし達が怒られるのよ!?」
「平気よ。バレたって料理長のせいにすればいいわ」
ナグマの発言にノズハは盛大な溜息を吐き出した。
「ザハラ!運ぶの手伝って!」
「は~い」
こうしてナグマとザハラはサフィーアの部屋へ料理を届けに行ったのだった。