砂漠の夜の幻想奇談
大皿を抱えながら、しずしずと回廊を歩く。
一階にあるサフィーアの部屋の入口が見えてきた時、ナグマとザハラは飛び上がりそうになった。
「か、カシェルダ様!?」
そう、カシェルダが部屋の前に座り込んでいたのだ。
カシェルダは自室を持たないため、暇な時はよくここにいる。
「ん?」
侍女二人に気づいたカシェルダ。
すくっと立ち上がると、彼女達に声をかけた。
「サフィーア様に食事か?」
「あっ、は、はい!」
嬉しさと驚きでナグマの声が裏返る。
「そうか、ご苦労。あ……君は確か先程の…ナグマだったか?」
「はい!覚えてて下さったんですね!」
「ああ。記憶力は良い方だからな。そっちの君はザハラだろう?」
まさかナグマだけでなく自分まで覚えられていたとは。
ザハラは嬉しくて頬を紅潮させながら何度も頷いた。