砂漠の夜の幻想奇談


 大皿を抱えながら、しずしずと回廊を歩く。

一階にあるサフィーアの部屋の入口が見えてきた時、ナグマとザハラは飛び上がりそうになった。

「か、カシェルダ様!?」

そう、カシェルダが部屋の前に座り込んでいたのだ。

カシェルダは自室を持たないため、暇な時はよくここにいる。

「ん?」

侍女二人に気づいたカシェルダ。

すくっと立ち上がると、彼女達に声をかけた。

「サフィーア様に食事か?」

「あっ、は、はい!」

嬉しさと驚きでナグマの声が裏返る。

「そうか、ご苦労。あ……君は確か先程の…ナグマだったか?」

「はい!覚えてて下さったんですね!」

「ああ。記憶力は良い方だからな。そっちの君はザハラだろう?」

まさかナグマだけでなく自分まで覚えられていたとは。

ザハラは嬉しくて頬を紅潮させながら何度も頷いた。


< 243 / 979 >

この作品をシェア

pagetop