砂漠の夜の幻想奇談
「では大皿を預かろう。俺が毒味してからお出しするから」
カシェルダのセリフを聞いた瞬間、笑みを浮かべていた二人は凍りついた。
「ど、毒味ですか!?カシェルダ様が!?」
「ああ。用心のためにな」
そわそわし始めたナグマとザハラ。
皿を受け取ろうと手を伸ばすカシェルダから一歩ずつ下がり、目を泳がせる。
「どうした?」
相手の不審な態度には敏感に反応する護衛官。
なかなか渡そうとしない彼女達に、カシェルダは目を細めた。
「あ、あの~……」
ザハラが何か言おうとするが言葉が続かない。
すると、隣にいたナグマが慌てて喋り出した。
「申し訳ございませんカシェルダ様!皿を間違えて運んできてしまいました!こ、これはカンマカーン王子の料理です!一度厨房に戻りますね!」
カシェルダに大量の酢入り料理を食わせてなるものか。
「ほら、行くわよ!」
ナグマはザハラに呼び掛けて小走りで廊下を戻り始めた。