砂漠の夜の幻想奇談
「なんだったんだ…?」
侍女二人の背中を見送りながらボソリと呟く。
カシェルダはふむと考えた。
「……カンマカーン王子の料理か…。王子だって断食中のはず」
推測で答えを導き出そうとした時、サフィーアの部屋からひょっこりシャールカーンが現れた。
「なにやら騒がしかったけれど、どうしたんだい?」
「いや……侍女達の様子が…」
「おかしかった?」
「明らかに不審だった。……料理に毒でも盛っていたんじゃないだろうな」
当たらずといえども遠からず。
しかしシャールカーンはカシェルダの言葉を一笑する。
「まさか。そんな愚かな真似をする召使は雇ってないよ」
「そんなのわからないだろう?あまり無防備過ぎると本当の敵に寝首をかかれるぞ」
「本当の敵…?誰のことだい?」
「自分で考えろ」
カシェルダは腕を組み、壁に寄り掛かって目を閉じた。