砂漠の夜の幻想奇談
第九話:打たれた先手
カシェルダのおかげで食の安全も護られているサフィーア。
ここダマスでの生活にも大分慣れてきた、そんな頃。
心臓に悪い出来事が起こった。
「おはようございます!サフィーア様、朝ですよ。お目覚めの時間です」
いつも通り、サフィーアの寝室へ朝一番に訪れたドニヤ。
彼女は顔を洗うためのたらいやタオルを運びながら、サフィーアの眠る寝台に近づいた。
「サフィーアさ……」
寝台を覗き込んで声をかけるも、絶句。
なんと、サフィーアの隣に見知らぬ黒髪の男性が寝ていた。
「き、きゃあああああっ!!!!!!!」
朝っぱら、ドニヤの甲高い悲鳴が屋敷中に響き渡った。
(……う……ん?ドニヤの…声…?)
間近で悲鳴を聞いたサフィーアはボンヤリしつつ目を開けた。