砂漠の夜の幻想奇談
「こいつ!!サフィーア様から離れなさい!!」
何やらドニヤが寝台から何かを引きずり落とそうとしている様子。
サフィーアはゆっくり自分の隣を見た。
「んん……なんだ、貴様は。姫と共に気持ち良く寝ていたというのに…」
どこかで見た、黒髪の青年。
まだ半分寝ている頭をフルに使い、思い出そうと頑張る。
(えっと…えっと…………あっ!!そうだ!!)
せっかくハッキリ思い出したのに、名前を声に出せないのが口惜しい。
(ダハナシュね!!)
ダハナシュ。
サフィーアの兄達がどうすれば人間に戻るか教えてくれた魔神。
砂漠で別れたきり会っていなかったが、なぜ今自分の隣にいるのか。
「早く離れなさいってば!!」
「イタタッ!髪を引っ張るな…!」
ドニヤに黒髪を引っ張られ仕方なしに起き上がるダハナシュ。