砂漠の夜の幻想奇談
「おっと、短気な連中だ」
サフィーアからパッと手を放すと、ダハナシュはニヤニヤ笑いながら寝台を降りた。
そのまま移動し、長椅子に寝そべる。
(ダハナシュ、何しに来たのかしら?)
まさか兄達の身に何かあったのか。
そんな不安がサフィーアの心に押し寄せてきた時、カシェルダが彼女の代弁をしてくれた。
「魔神、貴様何をしに来た」
刃を向けながらゆっくり長椅子に近寄る。
「ふふ、愚問だな。サフィーア姫との逢瀬を楽しむために決まっている」
「何が逢瀬だ!口を慎め!」
カシェルダが吠える横でシャールカーンも黒い笑みを浮かべた。
「悪いけど、サフィーアと楽しいことするのは俺の特権なんだよ」
だから、邪魔するな。近寄るな。今すぐ消えろ。
そう彼の目が訴えている。
しかし今にも人を斬りそうな殺気を真正面から放たれても、ダハナシュは寝そべったまま余裕綽々だ。
「はっ、マイムーナのお気に入りが」