砂漠の夜の幻想奇談
(どうしよう!シャールが!!)
意識はあるようだが出血が酷い。
彼の服は血で汚れていた。
(とりあえず、止血を!)
まだ持っていた黒い布で傷口を押さえてみるが、あまり意味がない。
「いい……大、丈夫っ」
そう言って猫背の状態で立ち上がると、シャールカーンはゆっくり廊下を歩き始めた。
辛そうなのを見兼ねたサフィーアが彼の身体を支える。
(ごめんなさい、シャール…!ごめんなさい!!)
声に出すこともできなくて、サフィーアは口を結んで涙した。