砂漠の夜の幻想奇談
第十話:素直な気持ち


 負傷したシャールカーンがサフィーアに支えられて部屋にやって来た時、ドニヤは飛び上がらんばかりに驚いた。

「王子!!サフィーア様!!」

二人に駆け寄り、主君の傷を確認してから廊下へ出る。

「誰かぁ!!医者を呼んで!!シャールカーン王子が大怪我をなさったわ!!」

隣近所の扉を叩きながら助けを求める。

するとすぐに同僚の侍女達がそれぞれの小部屋から出て来た。


「シャールカーン王子が!?」

「きゃあ!王子、血が!」

「早くお医者様を!!」


真夜中だというのに、一気に慌ただしくなった太守の屋敷。

医者を呼びに走って街へ向かう者や、応急処置に必要な湯やタオルを準備する者。

侍女達がそれぞれの仕事をしている間、ドニヤはサフィーアと一緒にシャールカーンを支え、自分の寝台に横たわらせた。


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