砂漠の夜の幻想奇談


 その宮殿の門はぴったりと閉じられており、門番はいなかった。

男達は戸を叩くこともせず、無遠慮に門を開き中へと足を踏み入れる。

少女もラクダから降ろされ、縛られたまま同行させられた。



「真っ暗じゃねーか」

「亡霊が住んでるんすよ?明かりなんて必要ねーでしょ、きっと」

宮殿の奥へと真っ直ぐ伸びる広い廊下を、月明かりを頼りにゆっくりと進む。


すると突然、天井から吊下がっているランプが光り輝いた。

「ひぃ!!」

「なんだ!?いきなりランプがつきやがった!」

驚きと恐怖が同時に押し寄せる。

その時だった。



「ねえ、俺の妻から離れてよ」


忽然と現れた金髪の青年。

少女を引っ張っていたお頭の首筋に三日月刀が突き付けられる。


< 3 / 979 >

この作品をシェア

pagetop