砂漠の夜の幻想奇談
それから約一ヶ月。
シャールカーンの傷はうっすらと跡を残すのみとなった。
臣下達が皆「シャールカーン王子回復!大怪我完治!万歳!」といった雰囲気で祝いの宴を計画する中、当の本人は全く別のことに心を向けていた。
「サフィーア、こっちへおいで。一緒に氷菓子を食べよう」
(い、いや…!遠慮するわ!)
ジリジリと後ずさり、逃げようとしたサフィーアの腕をガッチリ掴むシャールカーン。
「遠慮しなくていいよ。ほら、座って」
言いながら彼は、サフィーアを自分の膝の上に座らせた。
(いや~!座るならちゃんと椅子に座る~!)
膝の上で暴れるサフィーアを抱きしめてご満悦の王子。
ここひと月、サフィーアの思いを知ってからと言うもの、ずっとこんな調子でスキンシップを仕掛けてくる。
元気になった途端ウザったい王子に、サフィーアはほとほと困っていた。