砂漠の夜の幻想奇談

「ねえ、まだ心は決まらない?」

不意に囁かれ、耳が熱を帯びる。

結婚のことを言われていると察し、答えに迷っていると、不機嫌そうなカシェルダがズカズカと部屋に入ってきた。

「姫は貴様と結婚などしない!」

「おや、廊下で立ち聞きかい?」

「うるさい!聞こえたんだ。サフィーア姫付きとして、黙っているわけにはいかない」


(カシェルダ!助けてぇ~!)


瞳で救援信号を送る。

気づいたカシェルダはシャールカーンの腕を引きはがし、サフィーアの身体をひょいと抱き上げた。


「だいたい、姫には婚約者がいらっしゃる」

何気ない一言。

しかし、王子と姫はこれに衝撃を受けた。


「婚約者!?いるのか!?サフィーア!」


(し、知らないわ!初耳よ!!嘘でしょカシェルダ!!)



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