砂漠の夜の幻想奇談
目を見開くサフィーアを長椅子の上に下ろしながら、カシェルダは少々言葉を訂正した。
「婚約者、というより、婚約者候補です。王様がリストを作っておりました」
(父上が!?)
初めて知った事実に放心寸前のサフィーア。
「で?どんな奴らが候補なんだい?」
「姫のいとこや有力貴族、大商人など。合わせて十人くらいいたな」
「ふむ……それは政略結婚だよね?」
「王家にとってはな。リストに乗っている男は、ほとんどが姫を見初めて申し入れした奴らだ」
政略結婚という言葉を耳にして、サフィーアはテーブルに置いてあった紙と筆を持った。
カシェルダに訴えるべく筆を滑らせる。
(政略結婚は嫌!結婚するなら、私は好きな人とがいいわ!)