砂漠の夜の幻想奇談
「カシェルダ、俺もサフィーアの婚約者に立候補するよ。正式にね」
「はあ?」
長椅子で踏ん反り返っているシャールカーンを睨みつけるカシェルダ。
(シャール!?)
まさかの立候補宣言にサフィーアは口をあんぐり開けた。
「サフィーアも俺とならいいって言ってるし、立候補すれば問題ないだろう?」
「貴様……本気か?」
「ああ。使者としてバルマキーを派遣しよう。カシェルダ、共に行って取り次ぎを頼むよ」
「マジか……」
頭を抱える護衛官の服を姫はクイクイ引っ張った。
(カシェルダ!私からもお願い!リストの候補者と結婚するくらいならシャールと一緒になるって父上に伝えて!)
そう書いた紙を見せればカシェルダの覚悟も決まったようで。
「……わかりました。コンスタンチノープルへ参ります」
しぶしぶ了承。
「では早速書簡をしたためよう。バルマキーを呼んでくれ」
こうしてカシェルダとバルマキーのコンスタンチノープル行きが決定した。
どうしても海路で行きたいというバルマキーの意向を汲み、彼らは船で地中海を進んだ。