砂漠の夜の幻想奇談
父王が女好きなのはよく知っている。
まあ、流石に息子の女に手出しはしないだろうが、やはり心配である。
(どうするか…。あまり気が進まないな…)
長椅子に寄り掛かりながら唸っていると、使者がもう一つ書簡を差し出してきた。
「王子、こちらも」
「ん?こっちは誰からだ?」
「カンマカーン王子でございます」
「カン…?」
書簡を広げ、弟の手紙を読む。
――シャール兄上、申し訳ありません!父上に兄上とサフィーア姫のことをお伝えしたら、このような話に…。兄上はお忙しい身ですからご無理なさらないで下さいね。ですが、遊びに来て下されば僕も父上も嬉しいです
「……行くか」
可愛い弟の笑顔を想像して即決したシャールカーン。
弟に弱い兄だった。